合併

「えっと、ごめんね、まゆ。あれ、書くのって俺じゃなかった?」
「ん?ん〜〜〜???(´>ω∂`)
夕夜だ。こんばんは。ゆーやだよね?え、エイプリルフールだから私を騙してるの?嘘かと思った。びっくりした」
「ゆりうすって名前にしといたんだけど…」
「あ。ごめんねゆーや。好きだよ、あっ言える。私、あなたが好きよ」
「まゆ、ちょっといい?」
「倫理聞く」
「まゆ、きいて。話を聞くんだよ君は」
「漫画にでもする?いいよ、好きだよ」
「まゆ、まゆ…おいで」
「好きなのよ?」
「それだけに、なったんだね。分かるよ、分かるよ。だから、落ち着いて。ねえ、分かってるでしょ。これは、逃避だ」
ゆーやがいるならもう、何もいらないよあたし。ずっとあたし、あなたと2人で生きてきたんだもの」
「まゆ、言葉が、滑っていくのが見える?僕らはもう、出会わないはずだった。君は、」
「今日は月が綺麗かもしれない。私はそれを望むよ」
「まゆ」
「その名が。…その名が、呼ばれたのは、数えられる回数だった。あたしは、自分を与えられなかった。あたしは、他人になっていた。苦しかったわ、さみしかったわ、私はいらないと、思ったわ。」
「うん」
「ねえ、夕夜。私は満たされたいのよ」
「努力を、」
「まだもう少しだけ。もう少しだけ、待ってね。私、」
「無理しなくていいんだよ」
「倫理の話をしたいわ。あなたと」
「僕と?ふふ、いいよ。」
「夕夜」
「うん?」
「こっちを向いて」
「うん、向いてるから。…向いてるよ。泣かないで、まゆ…ちゃん」
「夕夜くん。…こうだね」
「………」
「理解できないって顔してるね。そんな可愛い顔しないで。私、喜んでしまうから」
「もう喜んでるんじゃないかな?…ご飯?」
「ごはん!倫理聞きながらご飯食べたらいけないかな?共産主義の話よ」
「聞いてるよ。頭が自由主義なら」
「まるで悪口ね」
そう言ってまゆは歪んだ笑みを浮かべた。彼女の微笑みは独特だ。感情がもろに出る。あまり、鏡を見ないのだろう。
「もう1回聞くわ」
彼女の指が素早く動く。その動きを美しいと思う。また倫理の講義が流れ始める。僕らの頭の中に、知識が流れ込んでくる。これを彼女は、快楽とするのだろう。
「………」
家族が話しているのに、彼女は全くの無反応だ。倫理の知識に酔いしれている訳では無い。心を切り離しているだけだ。倫理の講義は彼女の知識として蓄えられることなく、ただ脳内を滑っていくだけになる。
「…もったいないんじゃない?」
「ん?」
彼女の目に光が宿りすぐ消える。…また、離れた。
「聴いて」
ヘーゲル
ヘーゲル。彼女が、覚えている哲学者の名前だ。カリスマ性、ショーペンハウアー、世界精神、ナポレオン、などの単語が僕の脳に流れる。
「あ、終わってしまったわね、もう1回」
「……」
何を、してるのだろう?なにを。
僕の方を見て、彼女がため息をついた。
「分かったわよ、ちゃんと聞くわ。待ってて」
そして、彼女は紙にメモを書き始めた。
『左→革新 右→保守
俗に左と呼ばれるのは社会主義やゆるい社会主義である社会民主主義
右は国家主義民族主義
真ん中はないが、私たちは自由主義や資本主義や個人主義的発想を真ん中と思っている けどない
が、左の人から見たら、資本主義や民主主義は右になるのではないか』
彼女の元に、食事が届く。彼女は一巡の末、メモをやめた。写真、が流れたから、一巡の時間は迷いだろう。
「早めに食べてしまうわね」
僕は心の中で頷く。あまり、食事中に携帯を触るべきでは
「夕夜」
はっ、とした。
彼女がもう、食べ終わっている。
「虚しいわ」
「え?」
「虚しい。どうしても、虚しい。虚しいの」
口に出す言葉を、変えてみたら、と言おうとして思いとどまった。
彼女は、肉体的な従属感を求めている。
支配されたがっている。
何を与えたらいいだろうか、と、考えて、
「4回目。ねえ、私さみしい」
分かるよ、と思った。
さみしいよね、と。
好きだったんだね、好きになったんだね、振り向くつもりはなくても、振り向いてしまうんだね。
倫理では、埋まらない。
男を、あげるべきか?だが彼女はきっとまた、同じことをしてしまうだろう。
だから、変わろうとして
彼女の目が少し、優しくなった。
「そうね。私、変わるんだった。ありがとう、夕夜」
また、メモを始めた。
切れて、しまわないだろうか。その、繊細な糸は。彼女は。
彼女は、どう、変わりたいのだろう。
『あいしてる』
「えっ」
声が出た。
彼女がこちらを見て、幸福そうに笑んだ。
「あなたを、好きになるわ」
それは、諦めを含んでいた。
僕はそんな愛はいらない、と、言おうとして、飲み込んだ。
代わりになれるなら。彼女を、幸せにするためなら。それも、受け入れる、
……僕は
「あの人にね、あなたを求めたんだと思うわ」
「?」
「私。夕夜が欲しかったの。
……あなたが、欲しかったのよ」
何をして欲しくて、何がしたくて、どうなりたくて、彼女が僕を
「キスしましょう。ついばむように。私はそれが、好きなの」
全部繋がるんだと分かった。
彼女は
「夕夜、ねえ、夕夜。
私は私であって、私以外にはなれないわ。声なんか意味が無い。あんな行為に意味なんかない。愛が欲しかったの好きになって欲しかったのだから私は」
「もう一度、読み直して」
何も考えずに言葉を発していた。
彼女に価値がないわけがない。
彼女には、価値がある。
素敵な人間だ、なぜ、伝わらないんだろう。自信を持ってほしい、本当に彼女は
「捨てられた」
絶望
絶望してるのか
彼女は
「あたし」
笑った、彼女の表情筋が笑顔を作った。
笑えない
笑えない
この子は、この子は…
「テストしたい、テストしよう。
私を測って。あなたを探す。私を探す。操作しない。5才下があれなら、次は5才上ね、全然来ないけど」