素数

「今日は比較的、動けているわね。」
彼女が、うどんを茹で終わり僕に差し出しながらそう言った。
「そうだね」
不思議だ。彼女とこうして、生活している
「うどん、美味しいといいけど。みりん入れようかしら」
甘い、みりん風調味料のことか
「夕夜」
「ん?」
「…テレビ、見ましょ?ね。英語も聞きたいわ、関先生らしいのよ」
「え、そうなの。それはいいね」
「ラジオ英会話たまらなく楽しいわね、大好きだわ。」
「ね、大丈夫?」
「……うん。
ううん、あんまり。あんまり、大丈夫じゃない。大丈夫じゃない。全然…」
「自転車しようか」
「え?」
「外に出よう。」
「でも、片付けと勉強が」
「駅へ行って、必要なものを買うだけだよ。いいね」
「ゆうや、私は」
「動けないんだろ?なら、動こう」
「………、うん。変わる。変わる、変わる…私、動くわ。2時までに帰ってきて、洗濯物を」
「ああ、洗濯物。優先順位をつけようか」
「ゆうや」
「別に彼の名前で呼んでもいいよ」
「…………」
「…」
「……冗談やめてよ。あの人は、もっと、良い呼ばれ方があるわ。もう、私は…」
「どこまで行きたい?」
「え」
「どこまでも、行こうか。何時間も走ろう。すべて忘れるまで。疲れ切るまで。もう、何も考えられないくらいに。ね」
「ゆうや…」
「花を見に行こう。ね?良いでしょ」
「いいわよ。いいわね、見に行きましょう。でも、待って。やっぱり私、片付けや洗濯物がしたい」
「気分は晴れた?」
「面白いものを見て晴らすわ。なんとかするわよ。」
「ねむい?」
「ばれ…」
「寝てしまうの?」
「…少しよ?」
「うん、僕と話してくれてありがとう」
「………、この時間は…なんだろ」
そして、彼女が起きたのは18時だった。

「彼といたい」
「うん」
「まるでジブリ、ラクウショウ、」
「まゆ…」
「彼と行きたい、彼と生きたかった」
「うん、うん、そうだね」
「距離をおこうって言われたの、私は、私は私は」
「忘れるんだね」
「忘れるわ」
「うん」
「彼はいなかった」
「ごめんね、いるよ」
「え」
「君は愛された」
「あ……」
「彼を、忘れないであげて。君は幸せだったんだよ」
散歩をして、店に着いた。
サカナクションが、流れている。
ユリイカ、か?
「ゆうや、手を握っていて」
「……え、」
「だめ?」
上目遣いをされた。消えた、のリフレインが入る。
僕は、小指を出していた。
「……」
彼女がそれを見て、それから、僕の顔をまじまじと見た。
「……、ポムポムプリンは、ゴールデンレトリバーらしいわよ」
いつの話だ
「観葉植物を部屋に置きたいわ。ね、そうしましょ。片付けしましょ!」
今日、5時間
「今を見ましょう」
「なら、今倫理を聞くべきなんじゃないの」
「そうね」
彼女は、抜け殻のようだ。
自分には何も、ないように、思っている。
そして、自分を探そうとしている。
倫理を理解したら何かを手に入れられると思っているのだろうか
常に不安?
「祖父ががんの可能性があるらしいわよ」
は?と思った。
ガン?
彼女は全く
「肺に、ガンらしい影があるらしいわよ」
何故、そんなにも、無関心なんだ
「ゆうや?」
僕が苦しむことではない
なぜ、そんなにも。
なぜ…
「愛されたよね?」
「え?」
「愛されたよね」
倫理的実論、
「絶望は死に至る病らしいわよ、あまり、口に出したくないわね。忘れて」
肺がんは、
「花火しましょ」
彼女は、何を感じているんだ?
「…なによ。」
ぎらり、と目が光った
「悲しめばいいわけ?」
そうじゃない、そうじゃないんだよ
「なに、あわれんでるの。あわれまないでくれる?私は何も感じてないわよ」
何も感じてない?
犬が通った。鈴を鳴らしながら。
彼女はその音色に、ふわりと笑った。
どう、言葉にしたら
「眠い?」
「その言葉は僕には効かないよ」
胎界主
オプジーボは、何千万もするの?」
貧しいもののための、医療を。
「昨日だったかに話したばかりよね。放射線のがん治療。覚えている?」
まゆ、お願いだから
「…あの、悲しむのめんどくさいなと思ったことくらい分かってるでしょ。どんな顔したらいいのかなーって思ったよ。さめてるとおもった?違うわね、夕夜は、私を可哀想だと思ったのよ。侮辱だわ」
そんな話はして
「いいわよ、大丈夫よ。8時ね、」
彼女は、寝てはいけないのか
今日の反省は、彼女を外に連れ出さなかったことか
反省をして、次に生かしたいのだが、
「過去は過去よ今頑張ればいわ」

「お茶を飲んだくらいだけど。ご査収ください」
「僕、」
医龍読もうかな〜っ!」
「倫理」
ニーチェヤスパース
マックス・ウェーバー、妻を裏切らないヤスパース
キルケゴールはぼっちだけど、ヤスパースは他者が必要なのよ。私は彼と出会うまで、人なんか信じなかったわ。でも、彼を信じて、愛されて、私は本当に幸せだった。人間は良心を通して超越を感じるが、良心は超越からの声ではなく自己自身の声なの。ヤスパースによればね。キルケゴールは、ヤハウェよ。
そして、ハイデッガーね。
これはものすごく難しいと言われているわ、深めたいわね」
あ、入ったかな?
「存在の牧人、」