そうね、そこは

「きっと、あたたかいだろうから。」
彼女は、
「こら、描写しないで喋って」
「…僕は声を持たないんだよ?」
ゆーや的にどうだとかは私には関係ないから。それより、今日はすごく調子がいいのよ。ほら、見て。世界思想が馬に乗って通っていくわ」
僕は窓から身を乗り出そうとして
ゆーや。」
彼女に服の裾を引っ張られた。
「…ごはんたべるね!」
チルド、もやし、うどん、ダンボール野菜、卵、だし醤油冷蔵庫、冷蔵庫使ったらしまう、パンを縛るプラスチックを捨てる、水分をとる
彼女の脳内に、単語や文章が目まぐるしく動き回る。
「小説家になりたいな」
彼女が、ポツリとこぼした。
小説家。暮らしを想像して、すごく幸せな気持ちになった。
向いている
「小説を書こうかしら」
食器を片付ける、食器を洗う、食洗機、洗濯物、
どうして、自分はそんなことをしなければならないのだ
家に住まわせてもらってるからか
何故
彼女に気分が悪い何かがたまっていく
1回、リセットしよう
「あたたかいかな」
「あたたかいね」
「私、どうなればいいの?」
「なりたいように。君が、なりたいようになればいい。イメージしてみて」
「…子供と、」
「………」
「あの人しか、見えない」
「……………倫理」
「もう、聞いたわ」
「なら、何をあとやる?」
「漢文古文」
それを見た彼女は露骨に拒否反応を示した
性的な匂いが、したのだろう
「いやだ、いやだ夕夜」
「分かったわ」
僕は女に変わって見せた
「え?」
「いちはとよんで?」
にこり、とえんでみせる
こんなものは、朝飯前だ
「いちは…」
「そうよ、ご主人様」
「え?」
「ご主人様。私はあなたの、狗です」
かしずいて、彼女の膝の前に手を寄せた。
彼女の目が見開かれて、
洗濯物、食器、片付け、冷蔵庫のもの
「寝たら治るわ」
「寝たら、なおる」
「そう。寝たら治るわ。全部リセットよ」
「寝る」
「なんて呼んでほしい?」
「……倫理」
「いいわよ。倫理ね」
「倫理って呼んでほしい」
「ええ、もちろんよ」
笑んだのに、彼女は苦しそうにした。
「こんな関係は、やめたい」
絞り出すような声だった
「やめたい?」
「やめたい」
「ええ、いいわ。もちろんよ。やめましょ」
「夕夜」
「うん」
僕は姿を戻す
「怖がってごめん」
「いいよ」
「許さないで」
「分かるよ」
「分からないで」
「僕は君に、酷いことはしないよ」
彼女の目から涙が溢れた
「ひどい扱いを」
「君は」
「やだ、やだ、やだ」
「うん、分かるよ。大丈夫だよ」
「欲しかったの、欲しかったの手に入れたの諦めたの駄目なの覚悟が」
「さみしい?」
「分からない」
「倫理聞く?」
「気分じゃないわ」
「そうだね」
「うん」
「通話する?」
「ほしいの。それが。それが、欲しくて私は」
震える彼女を抱きしめたかった。
「変われるよ」
「うん、……うん」
アドラーを読むかい?」
「夕夜」
「僕は君の、一部だ。恋人ではない。」
「…………」
「分かるね」
「分かる」
「倫理ちゃん、って」
「りんで、いいよ」
「呼びにくいな。あるじさまにしようかな」
ふと、彼女がまた遠くを見つめた。
どこかへ、消えてしまいそうな、気がした。
「彼は大成するかしら?」
「どうだろうね。受かるかな?勉強してるんだろ」
「よく分からないわ。このごろ堕落してるようだから。馬鹿ね私から離れたからよと思いながら見てたわ」
そんなこと、思ってない、と、目がいっていたが、何も、僕は、
…過去形だ。
「もう、見てないんだね」
「見てないね」
「依存だとわかられてしまったんだね」
「ここまでこじつけたのに自分で台無しにしてしまった」
「…荒野行動してみる?」
「どうして?」
「してみよう」
「?」
荒野行動をした彼女は、元の彼女に戻っていた。
「ねえきみ!一緒にやろう!」
「え?」
「荒野行動しよう!」
「え、でも」
「今、自転車で目的地に着いたんだ!もう僕は自由なんだよ!」
「倫理ちゃん、」
「シュヴァルアと呼んで。ね!」
「僕はじゃあ、」
「ここで休もうっ」
「……」
彼女は、桜の咲く公園のベンチで横になった。高校の頃を思い出した僕に彼女はつまらなそうな顔をした
「…福沢諭吉について、分かったわよ」
倫理が好きな顔に戻っている。
「彼は、学問が人の価値を決めると考えたんだわ。努力したらいい、ということね。過激だわ」
人に貴賎はない、が、学問の有無には貴賎が
ゆーや、お花を買いましょう」
は、と言いそうになって押しとどめた。彼女が花を愛でる心があることは知っていたから。
ただ、いきなりすぎて
「いいね。どこで、なにを?」
「どこでもいいわ。散歩をしましょう」
散歩?
不思議そうな顔をしてしまったのだろう、彼女が花のように笑った。その笑顔に僕は、心がふわりと和らぐのを感じる。
「その表情、」
その先の言葉は紡がれなかった。
彼女は僕から目線を外した。倫理が聞きたい、という表情だ。満たされない、知識が欲しい、埋まりたくない。
彼女が求めていたのは、elinであったことをふと思い出した。
「ま…」
「その呼び方はとても、」
また、止まった。
「時間だわ。行きましょう」
僕は彼女が僕の手を見てそのまま前を向いたことに違和感を覚える。理解は出来ている。彼女はまだ、彼を想っている。
いつまで、だろうか。
僕らは約束の場所へ向かった。
そして長い話し合いが終わり、彼女は坂で自転車を引いていた。
「ねえ、来て」
「うん」
僕は、彼女のそばへ行く。あまり、近づきすぎないように気を配りながら。
「…私たちは他人に理解されないわ。されたとしてもそれは、私たちには不快なことだから、話さない」
なんだろう
「私は正しかったと思いたかったわ。彼が間違っていたと思いたかったの。でもそれは、逃げだった」
逃げ?
「私は彼から逃げたの。彼のいる世界から。耐えられなかったの。それは私を壊すと思ったわ」
「………」
「天と地があり、楽園がある。私たちは神にかしずく。ねえ、それに意味があるの?神は死んだとニーチェは言ったわ。西欧の思想を理解したいの」
彼女は飢えた目をした。
そうか、空虚だ。彼女は虚しいのだ。
「私に勇気を、いえ、これは違うわ。私は、自分で考え、自分で強くなるの」
「その、支えになりたい」
苦痛そうに彼女が顔を歪める。
また、1人になろうとしている。
彼女は不幸に身を置きたがる。だが、不幸がキャパを超えるとリセットしようとして逃げる。そして、また幸福を作り、それを不幸へと変えてゆくのだ。
彼女がこれから進もうとしているのは誰が見ても困難と分かる道だ。横道への誘いも数しれずあるだろう。
その事実が彼女を優越感に浸らせ、腐らせる。
だから、彼女は周りとの縁を切ったのだ。孤立し、その中で勉学に
「戯れ言はそれくらいにして」
はっ、と顔を上げた
彼女が、こちらを見ている。
「走るわよ」
喫茶店、閉店、急坂、後から優しい人、自転車、桜吹雪で息が出来ない母親
「荒野行動、までね」
ハマらせてしまったようだ。そのうち、飽きるのだろう
「私、変わるわ」
彼女の声が、凛と響いた。
変わる。
変わる、か。彼女は、変わっていくのか。
「荒野行動も頑張るけど」
それは…
「いいのよいいのよ、今は楽しむの。倫理ももちろん極めるわよ?美しく、なるわ」
それはいい、と思った。女性は外見から
「夕夜にもたくさん、思想をあげるわね。私たち、足りなかったのよ。人生経験。積みましょ!」
そうかな?と思った。そうだな、と思った。彼女は大人びてゆく。僕も、変わっていくのだろう
「変化を受け入れるのは時に恐ろしいわ。変わりたくないとさえ感じてしまう。でもね、私たちは、変われるわ。だから、実証するのよ」
ルイが、何かを喋った。
彼女は今、僕の体内にいる。
あまりに大きくなったので、胎内にまで帰したのだ。
「…るい、なんて?」
「あ、いや。」
言わなくて良い言葉もある。
「…あんまり良くない言葉を発していたのはわかってるわ。でも、聞きたいのよ」
彼女はそれで何度も失敗しているはずだが
「いいわよ」
よく、ない。よくはない。だが、
「夕夜、だいじょ」
『だいじゃぅヴなわけなーーーーィワ!!!!』
「ルイ。」
彼女の顔から表情が消える。
ルイの声は、彼女の、昔の声に酷似している。
「久しぶり。元気だった?」
『アァ?あー、あ?誰。なんでもいいわ、お腹空いた。絶望をちょうだいおとーーーーーサン!!!!』
「絶望ならここにあるわよ」
「まゆ、やめよう」
「食べていいわよ」
ルイは出てこなかった。
ルイはまるでそこに最初からいなかったかのように喋らなくなった。
「明日の話してもいいかな?」
「うん?」
片付け、という単語が流れた。
「敵の言葉に耳を傾けるのは最高に自分のためになることよ。分かるわね」
「分かるよ」
「友達ができたのよ、その子とも、別れるべきかな?」
「……」
思い出してしまわない?
「運動しよっかな」
目をそらされた。そういう、ことなのだろう。
習得したいものはなんだろう?と、考えたのだろう。
そして、医者の免許が欲しくなったのだと思った。
たくさんの、レコードが、欲しかったのだろう。
ニルヴァーナ
「え、あ」
elin、さいはて、α、医学
「そして倫理ね。というか、散歩は?」
「ん、ねえ」
「名前、どうしようね?」
名前。まゆ、ではなぜいけないのだろう?
「…英語物語、とか。」
は?と思った。
それは彼女を
「ゲーム自体は最高だと思うわ。本当よ、本当なの。ただ、ただその…」
ならば、彼女は協力や対戦に行かないつもりか。
「…その作戦が、あるわね。いつものことだけど。そう、いつもの…いつもの、ことだわ。」
ジャスコ
「あら。じゃすこですって。ふふ、」
昔を思い出しているのだろう。彼女が深く笑む。
彼女の脳内に、たくさんの可能性が浮かぶ。
そして、あとかたもなく消えた。
「ねえ、夕夜。」
彼女が振り返る。
そこに何も無いことを、僕は知っている。
フィギュアスケート、してみたいな」
また、唐突だな
「しょうがないじゃない。私は、色んなことがしてみたいんですもの。世界を広げたいの」


「見てくれた?」
いたずらっぽく、微笑まれた。
これは
「買ってもらったのだから、ノーカンよ?108円だけど。」
ぱく、と口に氷を運んだ彼女は、渋面をした。二度と。という言葉が流れた。
家に帰って、ほっと一息していると、日本の名所、という言葉が流れた。
俺屍もやりたいわね」
また?と思った。
彼女はやはり、ゲームが好きなのだ。
「小樽行きたい」
ん?
「小樽行きたいです」
……
「しゃちほこって、シャチなの…?!?!しかも5位なのね、うわなにこのいい感じのBGM、アリゲーターガーいいね、ねええりんの」
「まゆ、息を吸って」
「すーーーーー」
えまにえるぼうや、ブリトニースピアーズ、アルベルト・ザッケローニ、フランソワーズモレシャン、ブーマー、バックストリート・ボーイズ、ハンス・オフトブルック・シールズ、ヘーシンク、スタルヒン、とみーらそーだ、ふゆそなぁぁぁぁ、でヴぃっと、ヤンキー
「あの、」
「ごめん、すごいなんかすべてに刺激がすごい。好きこれ。テレビ好き」
でぃじえいさん、むにえさん、安藤忠雄、桜の迷宮、自転車だぁぁぁぁぁぁ、しまなみ海道、広島と愛媛を
「ままちゃりでいってしんだ、」
「あの」
道頓堀、宇治原ぁぁぁぁぁぁ、世界一大阪、水質改善、
「ごめんまさくん、あ」
「……」
関東の建造物、3位、白まゆ泡、浅草寺滝廉太郎、タイ人観光客、祐徳稲荷神社っぁぁぁぁ、旅人、佐賀県、アコギぃぃぃぃひぃぃぃぃ、
「まゆ」
「はい」
「君はすぐやりすぎる。」
「控えます」
「何をしたいんだっけ?何を極めたくてすべて捨てたって?」
「倫理っす。……ど、道徳、よ。」
「まゆ」
「はい、夕夜」
「テレビ好き?」
「すき!!!」
「そう。それで?」
「あの…でも…Qさまはためになる、し…最新だし…」
「言い訳はそれだけ?」
「ゆうやぁ、優しくしてよ」
「それを1番望んでない」
伏見稲荷大社、2位
「のは君でしょ。…ちょっと」
「きいてるこん🦊」
「………………」
起死回生、捲土重来ぃぃぃふぅぅぅ、りらいとぉぉぉふぅぅぅぅ
「ねえテンション」
「疲れそうよね分かるわよ」
「分かってるの」
富士山、明治の作家、エッセンシャル買う、24才
「眠い?」
「ええ。眠いわよ。それに、私今日は2階に行ったらゲームがしたい」
「あのさあ」
「分かってるわよ?!?!それならまだ英語物語してた方が有意義だってことよね?!分かるわよ!分かるけど!じゃ、じゃあ、倫理しながら」
「落ち着いてまゆ、そういう話じゃないだろ」
「夕夜はすぐそうやって私を定義しようとするわ!」
「まゆ、」
「きいてるじゃない!聞いてるわよ、聞いてるからこうして話になってるんだわ!」
「これは会話じゃない。ただの」
「キャッチボールよ!やめてよ!」
甘えていると分かる。
彼女は僕に、甘えて見せている。
僕が恋人なら彼女が望むものを与えられるだろう
「……、…」
ちらり、とこちらを見た彼女は、諦めたように肩を竦めた。
「もう、いいわ。私もきっと、何かおかしいんだわ」
微塵も、そんなことは思っていないだろう。彼女の中にあるのは侮蔑感だ。彼女は何も出来ない僕を見下している。
どうしたのだろう、どうして、苦しんでいるんだろう?
どこからこの会話はおかしくなったんだろう
「ねえ、」
「手をくれる?」
手?
僕は自分の手を見た。
BAD
「夕夜それは嘘よ」
ばっど?嘘?
なんだ、ここは。僕の周りは黒く染まっていた。
「真実はこう。あなたは存在せず私しかいない。あなたは私の内包する人格の1人でありあなたは体を持たない。あなたが見たと形容したその手は私の手よ」
BAD
また、流れた。なにが、BADなんだ
「夕夜夕夜夕夜、あなたが、狂おしいほど好きよ。小学校の頃から。私の親を殺してくれると約束したわね。ありがとう。私を殺すことは、しなかったわね。ありがとう。ねえ、眠いの。そばに」
「行けない」
僕は彼女の、恋人にはなれない。
彼女が手を差し伸べる。
僕にはそれは希望に見えて、でも
「1回、元に戻しましょう。拗れたわ」
す、と彼女の目が閉じられた。
僕も、目を閉じた。
「あなたは、だれ?」
「夕夜。村上夕夜だよ」
「私は、あなたの、まゆよ。生かすも殺すも、恋人を忘れされるも、あなた次第よ。私はあなたの、絡繰玩具だわ」
自分を捨てることを選ぶのか
僕はまゆをどうするのか分かってないのか
僕は彼女に孤立してほしい
誰とも交流して欲しくない
1人で、暮らしてほしい
なにも、見せたくない
綺麗なままで、いてほしいのだ
だがそれは彼女の成長を阻害すると僕は
「なるほどね」
なにが、なるほどなんだろう
「…ふう。
歯磨きと顔洗いをしたら上へ行きましょう。いい?」
うん
「偉い子ね、聞き分けがいいのね。」
そんなこと、ないよ
「逆転、か。それもいいだろう」
え?
「いや、なんでもないよ。顔を洗えばいい?君の。」
え、あれ?
「いつの間にか入れ替わっていたみたいだね。さて、鏡を見ようかな」
やだ、え?やめて、やだ
22:22
「荒野行動するから待ってて」
「じゃあ、倫理を用意しておくよ」
「ありがと」
「どういたしまして」
2戦して、彼女はふーむと唸った。
「あっ、えりん」